『環境』第一巻第九号
発行年月日、昭和5年11月20日
発行所、城文堂(時習学館内)
発行者、戸田雅皓
《 本誌の社会的使命
◇實際教育者がその日日常生活に於て最も等閑視してならない問題は、
謂ふ迄もなく教材と教法との研究である。而して之こそ實に實際教育者
の活動根源動力であつて、之を缺く事は蒸氣機關に燃料の缺乏したのと
同様である。彼の老朽と嗤はれ、若朽と罵しられる輩の如きも、畢竟之
に基くものである。
◇所が教育者の日常生活は實に多忙極まるもので、その裡にあつて、よ
く「日進日新」の環境に順應して、各方面に於ける人類活動の實相と、
多方面の教材に亘つて新進の活教材、重要な變動教材を發見蒐集する事
は實に容易な事柄ではない。
◇爰に本誌は微力乍らも、實際教育家諸君の從順な伴侶となり、學校に
對する忠實な備忘係となつて、諸君の事業の一部を分擔し、教育の最前
線に立つて活躍さるゝ諸君をして後顧の憂無からしめたいと希つて居る
次第である。而して卷を重ぬると共に内容の總目録を作成し、教材集成
として長く生命あるものたらしめたい。
◇次に科學的な教育學の問題、若くは系統的な教授法の研究は活教材の
蒐集と共に車の兩輪、鳥の双翼にも比すべき重大且つ肝要な事柄であつ
て、本誌のまた努力せんとする所である。本號特に牧口氏の「創價教育
學」を推奨した所以も爰にあるのであつて、實に氏の教育學は行詰つた
現代教育に對する根本的改造の烽火であり、教育甦生の第一線を行くも
のである。(東山子)》